ジムのトレッドミルで走れば、少なくともカロリーは消費できる。だが、AIコーディングというトレッドミル を全力疾走した先に残るのは、疲労と不確実性と技術的負債かもしれない。

「今日はAIで2,000行もコードを書いた!」。これは今、開発者が最も酔いやすい誘惑だろう。

ソフトウェア分析チームのGitClearは、2億行を超えるコードを分析 した。その結果、AIの普及後に急増したのは質の高いリファクタリングではなく、「コードチャーン」だった。書かれたばかりのコードが、わずか2週間のうちに何度も覆され、修正され、あるいは丸ごと削除される割合は、過去最高に達している。

物理学にはブラウン運動という現象がある。花粉の微粒子が四方から水分子に激しく衝突され、不規則に跳ね回る運動だ。しかし時間軸を引き伸ばしてそのベクトルを計算すると、どの方向へ進む確率も等しいため、「平均変位」は実のところゼロになる

チューリング賞を受賞した計算機科学の先駆者Edsger W. Dijkstraは、1988年の有名な覚書 ですでにこう警告していた。

「コード行数を数えるなら、それを『生産された資産』ではなく、『費やされたコスト』と見なすべきだ。」

AIは確かに、10倍の速度でコードを生産(浪費)させてくれる。だが残念ながら、前へ進む距離まで10倍にはしてくれない。

この激しい足踏みの正体が、少しずつ見えてきたところで……

なぜ私がほんの数行に手を入れただけで、AIのコーディングループはバグを生み、ついには制御不能に陥るのだろうか。